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サイクリスト Cyclist 監督: モフセン・マフマルバフ (監督オフィシャルサイトへ) 1989年/イラン カラー・スタンダード・83分 出演: モハラム・ゼイナルザデ、 サミラ・マフマルバフ 1989年 イタリアRimini Festival/ベストフィルム賞 1991年 ハワイフィルムフェスティバル/ベストフィルム賞 世界80ケ所以上の映画祭に出品 |
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アフガニスタン難民・ナシムは一週間、休まず自転車に乗り続けることが出来るか?
病気の妻の入院費を稼ぐため、男はこの無謀な賭けに乗った。イランの巨匠マフマルバフの代表作。「全てのイラン人が見た」と言われるほどに民衆に愛され、世界中の40を超える映画祭で上映されたというイラン映画の国際的な評価を決定づけた記念碑的作品。
解説貧しき人々の連帯とささやかな夢を鮮やかに描ききったマフマルバフは、一躍イラン大衆の英雄となり、監督としての名声を不動のものにした。マフマルバフは子供の頃に本当にこの自転車乗りの賭けが行われるのを見たという。彼ら子供たちはこの奇妙な見世物の自転車乗りをあざけり、色々な悪戯を仕掛けた。しかし、時が経つにつれ、その車上の男の姿に純粋な子供たちは心打たれ、いつしか畏敬の念を覚えていったのだ。彼はその時の純な驚きをこうしてフィクションとして再構築した。彼の思い出はナシムの息子と露天の一角を占めるジプシー女の娘との友情にも生かされている。そしてこの幼い娘を演じたのは『りんご』『ブラックボード(原題)』を監督してカンヌを騒がせたマフマルバフの娘サミラである。広角レンズを多用し、前衛的ですらある大胆なカメラワーク。自転車上のナシムに関わる人々を多彩に配置し、幾つものスリルとユーモアを交えた圧倒的な語り口。シンプルな題材を描きながら魔法のような面白さを披露する現在のマフマルバフそのものの魅力がある。
あらすじ イランの隣国アフガニスタンからの難民ナシムは子供を抱えて貧しい生活を送っていたが、妻が入院することになる。日々の糧を得るのが精一杯だった一家に、その費用は重くのしかかる。そんなとき知り合いの興行師から、一週間自転車に乗り続けることに成功すれば多額の賞金が出ると聞き、ナシムは決心を固める。かくしてかれは一週間を自転車の上で過ごす前代未聞の“サイクリスト”となる賭けに挑むのだった。彼が自転車に乗り続ける広場には多くの物見高い人々が集まり、ついには露天までもが軒を連ねてしまう。3日目の夜中頃、見張りの男が居眠りをはじめるとついにナシムは極度の疲労から倒れてしまう。しかし仲間たちが見張りの男に気づかれぬよう彼を隠して寝かせ、身代わりの友人が布で顔を隠して自転車に乗る。数時間眠ったナシムは再び自転車に乗り、まぶたをマッチ棒でつっかえ棒をしてこじあけながらペダルをこぐ。遂に一週間が過ぎ、ナシムは自転車に乗り続けることに成功する。人々は彼を英雄とたたえるが、ナシムはいつまでも自転車を降りず、取りつかれたようにペダルをこぎ続けるのだった。 |